一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/


先日たまたまテレビを眺める機会があり、養命酒が未病について語っているのを目にしました。その時は「ずいぶん変なことを言うなぁ」ちゃんとした東洋医学者に指導を受けているのだろうか。と感じただけだったのですが、日を追うごとに心に澱のようなものがたまっていきます。これはこのまま放置しておいてはいけない。東洋医学について深い誤解が生じる元となる。という思いがつのってきたわけです。ところが時すでに遅く、何が述べられていたのかすっかり忘れてしまっていました。そこで思いついて、インターネットで検索してみることにしました。便利になったものでですね。見つけたページのアドレスは以下。

http://www.yomeishu.co.jp/health/index.html

そこにはこのように書いてあります。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
【未病】
病理概念のなかに「未病」という
言葉があります。病気ではないけれど、
病気へ向かっている状態のこと。〔伴注:ここには赤線が引いてある〕
例えば、手足の冷えや体の疲れ、胃腸の不調。
それは病気のサインかも知れません。
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


養命酒が話題提供をしてくれたわけですけれども、それは別としても未病の概念は、東洋医学の基本認識にかかわるものです。そこで、一元流鍼灸術における未病の概念をまとめておくことにします。

未病の概念は、その人間が生きて病み老いて死ぬということをどのように捉えているのかということとかかわってきます。未病という言葉は、そのまま訳すと、未だ病まずとなりますので、すなわちまだ病気ではない状態であると考えやすいものです。けれども、よく考えてみると病んでいない人間は有り得ません。人間は弱いものです。どのような人間も死を逃れることはできませんし、死ぬためにはその手前で何らかの問題が起こるのは当たり前のことです。

この死という決定的な事件が起こる以前に、人間はある繊細なブレ〔伴注:すなわち非健康状態〕をさまざまに繰り返します。死を避け体内に蓄積されている矛盾を解決しながら生きているわけです。食べればお腹がいっぱいになり、便意を催し眠くなるという、この一連の生理的な流れとみえるものも、実は身体に解消できる程度の無理を与えることによって身体を養っているものです。このようにして人間はその一生を通じて、生命を維持しているわけです。

ですから東洋医学的な治療とは、この繊細なブレをなくすことではなく、その繊細なブレに上手に対処できる手助けをすることです。それによって自然治癒力が働きやすくなり、いざとなったときのために余力を蓄え、危機的な状況が起こった場合に、それを乗り越えることができるようにするわけです。

ですから、東洋医学において未病を治療するということの意味は、身体のバランスが大きく崩れる以前の繊細なバランス状態を維持し、回復しやすい身体を作ること。すなわち、より敏感でより器の大きなな身体を作ることになります。より敏感な身体を作るということになりますので、症状は出やすくなるかもしれません。けれどもそこをすばやく経過することによって、深い病の基を体内に作らない、溜めこまない、ようにしていくことができます。

ですから、一元流鍼灸術において「東洋医学は未病を治す」という言葉を解説すると、

東洋医学では病気と思われるときでも健康と思われるときでも常によりよい身心状況を作り上げることを目標としており、このことを「東洋医学は未病を治す」と表現しています。よりよい身心状況とは、外界の刺激を取り入れることのできる大きな器を持ち、強いストレスを敏感に排除し、生命を防御する機能を高めることです。

という表現になります。


「未病」というのは病理概念ではなく実は生命のありようすなわち東洋医学的な生命観を示しているものです。それを未病と表現することによって、体質改善を促す際、病になる以前に自らの生活習慣に気をつけようという呼びかけであり、症状が出るか出ないかにかかわらず生命力を向上させるための指導をしなくてはいけないよという治療家への指示となるわけです。養命酒のホームページで語られている「病気ではないけれど、病気へ向かっている状態のこと。」という言葉が、いかにいかがわしいものかご理解いただけると思います。人間には完全な健康状態というものはなく、また完全に病的な状態というものもないものなのです。いつもその生命の器の上で揺らぎながら生きているのが本来的な人間の姿なのですね。
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一元流鍼灸術において「病機」という言葉を使用しない理由は、それが日本語として確立されたものではなく、現代の中国語がそのまま文字だけ置き換えて出されているものだからです。

中医学で使用されている「病機」という言葉の中身は日本語に置き換えると「病理」になります。そして、病因病理という言葉は昔から日本において使用されており、わざわざそれを漢字の置き換えだけの理由で「病因病機」としてあたかも特有の用語のようにかたるところに、専門家風をたなびかせる人々の賎しさを感じます。

そのため一元流鍼灸術では、伝統に法るという意味を含めて病因病理あるいは病理という言葉を用いることにしているわけです。

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