一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/

12月の勉強会でお話ししたことは
江戸時代初期の時代精神は、求道だった。
言葉を越えて真実を求めるところにあった。
その医学的な成果が『難経鉄鑑』だという話ですね。一言で言うと。

儒教哲学的な成果は伊藤仁齋の気一元論でしょう。
けれどもこのあたりの求道心のすさまじさというものは実は、
学問の世界では抜け落ちてしまうところです。
学問の世界って、言葉をつきあわせているだけで、追体験しないからですね。
だから言葉を越えましょう、自らの心に響き合わせることで、
それが真実により近いのか遠いのかを感じ取りましょう。

石田梅岩は、そのような求道的な学問を定式化して提示しています。
いわゆる石門心学です。
禅の悟りの体験を人々に伝えたいと、塾を開き、
集まってきた商人に道を説いたため、商人道の元祖のようにいわれています。
ただ、現在、その方法論が継承されているのか、
商人道という果実だけが継承されているのかは私は知りません。
言葉となった果実だけが伝えられているのかもしれませんので。

そう。
私は、言葉を創造する者でありたいと思っています。

それが、言葉を越えて真実を求めることだと思います。

求めて得た真実を、言葉にして語るその言葉は、
まさに人生をかけて得ることのできた発語の言葉、創造の言葉です。

弁証論治を行い病因病理を作るということは、
まさにそれをやり続けているということです。
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言葉に魂が宿っているということから
日本民族は言霊という言葉を作り
言葉を軽々に発しない

言葉の危険性は、
言葉を発することによって純粋な体験から離れてしまうところにある。

言葉は分別知を産み、分別知は言葉を利用して
純粋な体験に色づけをしてしまう。
純粋な体験に分別知による方向をつけてしまうため、
体験が歪んでしまうのだ。

この危険性を知っているため、
日本民族は言葉には魂が宿るとして
「言霊」という言葉を作って言葉を大切にし、
軽々に言挙げしはしないようにしているのである。

これは純粋な体験を大切にするところから発している。
純粋な体験は言葉によってすぐに穢され、
偽善や欺瞞や嘘作り事の世界が始まる。

純粋な体験を表現することが詩なのだが
詩人は、純粋な体験を大切にすることから、
言葉の意味を越えて飛翔する
そして分別知の入りようがない
純粋な体験を表現していくのである。

これが、言霊となって真実の世界への眼を開かせる言葉となる。
12月に私がお話しするものは、「日本型東洋医学の原点」についてです。日本的東洋医学というと、平安時代に丹波康頼によってまとめられた「医心方」を思い浮かべる方も多いと思います。が、今回は江戸時代初期100年間ほどのできごとが中心となります。

その理由は、
1、「医心方」は丹波家代々に伝わる書物にすぎず、大衆的に論議されたものではなかった。
2、医学がはじめて市井の学問となったのは、江戸時代であり、その源流は室町時代に田代三喜が明への留学から帰国してもたらした、明医学にある。
3、この明医学を実学として使える医学とするために、田代三喜を含め日本の医家たちは格闘していた―この姿勢は中医学を実学とするために格闘している我々が学ぶべきことである。
4、 朱子学の理気二元論を儒学者が気ー元の生命観で剋服したように、気ー元の生命観が日本で育まれることとなった。ここに日本医学の基礎があり、その根底には禅の影響がある。
といったところにあります。

そこで今回の話の目的を、「言葉を越えて存在そのものを理解する」―江戸時代初期の求道者たちの姿勢からー元流鍼灸術を行ずるための基本的姿勢を学ぶ
というものにしました。

いわば、これからの東洋医学を構築していくための「志」をどこにおくのかということを先人に学ぼうというわけです。

この話の端緒は実は、澤田健にあります。私が鍼灸学校に入りたての頃に何回も読んでいた書物『鍼灸眞髄』に描かれている鍼灸師です。彼はそこで、「死物の古典を以て生ける人体を読むべし」と述べています。

彼が教科書とした書物『十四経発揮』『和漢三才図会』『難経鉄鑑』の三種類のうち、前の二つは現在も我々が学んでいる臓腑経絡学に相当します。『難経鉄鑑』では、気ー元の人間観が述べられています。テキストにもある六十六難の図は、その構造が表現されているものです。澤田健は、この図を毎朝黙座して眺めつづけると、すごいことがわかるよと教えていました。

直接的な登場人物は、『難経鉄鑑』の著者である広岡蘇仙とその道統です。けれどもその時代精神をより明確に表現しているものとして、時代精神の鼻祖である中江藤樹、その弟子の熊沢蕃山、君子の学として同時代に武士道を唱道した山鹿素行、そして、彼等の学び方をまっすぐに伝承して表現している石田梅岩を紹介します。

「志を立てる」ことの激しさと大切さについて考えてみたいと思います。

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