人はいつか死にます。そして鍼灸漢方が治病の重要な手段であった時代、死は現代よりもはるかに身近にありました。対処できない疾病もたくさんありました。江戸時代末期には、コレラや梅毒が蔓延し、大正時代に至るまで死因のトップだったものは結核でした。
これは、世界共通の対処すべき課題でした。
この課題を解決し、人類を長寿に導いた中心は、ウィルス研究を含む細菌学の発展によるものです。それまでは、西洋においてはホメオパシーと瀉血療法が医療の中心であり、東洋では漢方と鍼灸とが医療の中心でした。19世紀の末、日本の明治時代末期まで、病原菌による淘汰を人類は受けていたわけです。
この戦いに勝利し始めたのは実に20世紀に入ってからのことであり、わずか100年と少しの歴史しかありません。体外からの自然の脅威を克服した人類は、その勢いをかって体内における自然を克服したとも言えるのかもしれません。この病原菌と、それに対処するための薬という、悪魔と天使の闘争は、耐性菌の出現をみればわかるとおり、これからもずっと続けられていくこととなるのでしょう。
東洋医学では、「内傷がなければ外邪は入らない」と述べられています。内側の生命力の構えがしっかりしていれば、ウィルスや細菌に侵されることはなく、もし侵されたとしても自分で自然に治すことができるという意味です。実際、コレラや梅毒が蔓延して多くの人が亡くなったわけですが、感染しても発症しなかった人や軽症だった人や感染しなかった人もいました。そのため、人類は現代に至るまでその生をつなぐことができているわけです。
鍼灸は、この内側のかまえを充実させることができます。生命力を強めていくという側面において、鍼灸師はその力をもっと発揮することができるでしょう。
生命力は全身まるごと一つのものとして存在しています。その全体観を離れて生命を語ることはできません。
このことが実は、もっとも大切なことだったわけです。
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