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一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/

おわりに 生命の医学に向けて



東洋医学は、生命をありのままに診て捉え、生命力の偏在を調える技法を内包しています。けれども実際に何が行われて、どうして治療効果が上がっているのかきちんと理解されてません。その理由は、古典の理解のしかたの甘さや、探究の不足によります。

今、目の前にある患者さんを通じて理解するべきなのは。古典の記載がいかに甘いかということです。言葉としてたくさん書かれ理論として学校で教えられるものよりも、患者さんの身体は無言でたくさんのことを教えてくれています。

その無言の言葉を聞く耳を持たなければ、臨床は実は成り立ちません。その耳の澄まし方と、それによって聞き取っている言葉について、ここまで少しだけですが私の意見を述べてきました。

大切なことで言い足りなかったことも多く、強調したいために繰り返し述べているところも多くなりました。

これからさらに自身を磨き上げていくことによって、さらに新たな世界が見えてくることを予感しています。その時にはこの文章は、自ら振り返って恥ずかしいものとなっているかもしれません。けれども、これが今の私の実力です。今表現できることの中心をお話しすることはできたと思います。

人々の生命を応援していきたい。そのために私は何ができるのだろうか。そういうところから探究は始まっています。


ギリシャ医学―いわゆる紀元前400年頃のヒポクラテスの医学とそれを継承しまとめた紀元後200年頃のガレノスの医学、それがイスラム諸国に継承されたユナニ医学、それを継承した中世西洋の修道院における医学及び、それを継承した西洋における伝統医学は、体内における体液(生命力)のバランスをとることによって生命力を向上させ、疾病からの離脱を図るという発想を持っていました。

そしてこの考え方は18世紀のドイツにおける医学大学でも医学の基礎として教育されていました。

これはまさにここで述べた生命の医学そのものに思えます。もしかすると、伝統医学というのは実は生命力を問題にしそれに関わろうとしていた医学なのかもしれません。であれば、第九章の医学の目的で引用した木村敏の言葉はまさに、エビデンスを求め科学主義に偏してしまった人を人とも思わぬ医学から、生命医学の伝統を取り戻そうとする、精神分析学者からの呻き声とも聞こえます。

東洋医学を行ずる者たちが、生命医学の伝統を取り戻そうと意志することはあるのでしょうか?それとも、このままエビデンスという名の科学主義に押しつぶされていくのでしょうか。

この論考が、機械論的な症状の医学ではなく、総合的な生命の医学へと鍼灸医学が脱皮していくための足がかりとなれば幸いです。
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