fc2ブログ

一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/

太極図―陰陽五行の使い方


周濂溪(1017年~1073年)が採用し、宋学の基礎的な宇宙観とされた太極図は、宋学―朱子学の基本とされ、朱子(1130年~1200年)によって解説が付されています。(『近思録』)

伊藤仁斎(1627年~1705年)の古学においてはこれは観念的であるとして採用されませんでした。けれども『一元流鍼灸術の門』においてはその総論で、これを採用しています。それは存在の構造を古人(宋代、日本の平安時代末期の人ですが・・・)がどう考えていたのか示すものとして便利だからです。いわゆる、陰陽五行論を採用し、気一元の生命であるる人間の、内的なバランスを観るのに便利なためです。


『一元流鍼灸術の門』の中では言葉の発生における聖人の姿勢について述べられています。まさにこれは、たとえるならば脉状という不可解なものに直面して混乱している鍼灸師が採るべき、一筋の姿勢です。

言葉にする以前に存在そのものを感じとろうとする(無極)。脉を診ようとする。

その感じとっているものには括り―形状があることを意識する(場の設定―太極)。脉には診るべき位置や形状があることを意識する。

気一元の場を設定し、それをより明確に意識して言葉で表現しようとする。その際に、陰陽の観点、五行の観点を意識することによって、言葉の意味を明らかにし(理)、診ている脉状(気)をバランスよく表現しようとする。

それが言葉の発生の原点であり、現在においても活用することのできる、生命の表現方法であると言える。そう一元流鍼灸術では提案しているわけです。

この無極から太極への意識の移動、それにともなって起こってくる言葉の発生の流れは、現代哲学における現象学の(メルロポンティやカールポパーやマイケル・ポランニーなどが挑戦し、栗本慎一郎が『意味と生命』の中でまとめている)「言葉の発生についての疑問」に呼応しています。言葉以前に存在している概念(!)である暗黙知と、その顕在化すなわち言語化。がどのように行われているのかというきわめて内省的な検討作業が、この脉を診るということと脉を表現するということひいては、四診を行うという作業全般につながっているものです。(ここ、勉強を深めたい方のために哲学者の名前を列挙しておきました。臨床的には関係ありませんので読み飛ばしてください。)


「生命」という「気一元の場」を二五の観点から見直していくという発想は、「揺らぎ変化し続けている一」たる生命のバランスを診ていこうとする際、とても便利な方法です。この二五の観点(陰陽五行の観点)が観念論に堕さないギリギリの位置がどこにあるのかということが、『一元流鍼灸術の門』では示されています。それは、気一元の観点から離れないということです。五が集まることによって気一元の場を構成しているのではなく、一(気一元の場)を観るために二五の概念(すなわち陰陽五行)を使用しているということです。


そしてまた、この五の相互関係が、相生相剋論における五角形の五では「ない」という点も重要です。

『素問』の中でももっとも古い『太陰陽明編』やギリシャ医学(ユーナニ医学すなわち十八世紀ドイツ医科大学で学ばれていた、西洋医学における伝統医学)でも使われていた四、すなわち東西という横の陰陽関係、南北という縦の陰陽関係の二次元の線。そしてその竪横の「むすび」である中心に加えられた一点。それらを合計した五こそが、あるがままに場を捉える際の数になります。これが一元流鍼灸術における五の中身となります。

ここを基本として四診の方法・弁証論治の方法・処置方法までを一貫して解説しているものが『一元流鍼灸術の門』であるということになります。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://1gen.blog101.fc2.com/tb.php/304-a8bc7f33

この人とブロともになる