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一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/

中医学は論理的か

ある書籍で、中医学は論理的で日本医学は非論理的であるという言葉を読んでびっくりしました。日本における経絡治療と呼ばれる鍼灸集団に論理というものが存在しないということには異論はないなのですが、中医学も言葉が多いだけで論理的な整合性はありません。

ここで中医学と呼んでいるのは、現代中医学すなわち上海から外国人教育のために始まった教科書的中医学について論じています。とはいっても天津の中西医合作は、より論理性が乏しいものです。上海を越えるものはおそらく、北京中医研究院あたりの弁証論治派となるのでしょうが、おそらくそれは中医学界ではマイナーな部類に入るでしょう。

なぜ、教科書的な中医学が非論理的であるかというとそれは読めばわかります。と言ってしまえばおしまいなのですが、基本理論である元気論・陰陽論・五行論についての記載はあるのですが、それが基本理論であるにも関わらず、また、中医学は理論によって構成されている部分が多いにもかかわらず、治療理論にまで反映されていないからです。

すなわち、基礎理論は基礎理論で述べました。古典に記載してあるとおりです。それを前提としているかどうかは別としてその応用である治病理論も述べました。歴史的にたくさんの解釈と治療法がありまんべんなく取り上げておきます。弁証論治に際しては、八綱弁証・衛気営血弁証・六経弁証・五臟六腑弁証などを適宜組み合わせて使ってください。そこには法則はありません。臨床家の勘によります。といった具合なのです。このどこから論理を導き出すことができるのでしょうか。

医学は患者の性急な要請すなわち「今この痛みかゆみをなんとかして欲しい」という思いによって堕落しあるいは導かれてきました。けれどもしかし《黄帝内経》はその患者の思いを乗り越えて初めて成立したものなのではないでしょうか?だからこそ未病を治す、すなわち患者の全生命状況を把握する中から治療方法を導いていくという観点が成立たのではないでしょうか。

後世の臨床家の多くはその全体観を理解できず、そのような広大な構想を持った医学から、単なる治療技術のみを抽出して伝えてきました。現代でも何の症状に効くツボは何ですかという発想しかでき得ない「治療家」がたくさんいます。

我々は何を学ぶべきなのでしょうか。それは、どのように人間を把握するのかという方法論と人間観なのではないでしょうか?

そのような人間観の把握において、中医学はまったく欠格しています。なぜなら、中医学の指導思想はどうしても毛沢東をつなぎとするマルクス主義的機械論を乗り越えることができないからです。中医学の狭さは、この機械論あるいは唯物的な人間観にあるということを理解し、用心すべきでしょう。中医学はその本来の発生において、古来から連綿と続いている東洋医学を裏切っているものだからです。
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