fc2ブログ

一元流鍼灸術

一元流鍼灸術の解説◇東洋医学の蘊奥など◇HP:http://www.1gen.jp/

失敗の研究

弁証論治を起てて、さぁ治療するぞというとき、ふたたび迷うことがあります。
それは、弁証論治そのものは自信を持って起てられたんだけれども、果たしてその方針で主訴の解決に至るのだろうかという疑問です。

実は、歴代の医家の症例集などを読む理由の多くは、このあたりの頭の柔軟性を広げるというところにあります。

実際に患者さんに出会うと、目の前の患者さんが困難に直面している局所に着目してしまい、それを何とかしたいという欲が出てくるわけです。そこで、弁証論治と実際の治療との乖離が生まれてきます。弁証論治は起てたのだけれども雑駁な治療をしてしまい、何をやったのか実際のところはわからないという事態に陥るわけです。

これが臨床家の一番の問題となります。治ったけれどもその理由がわからない。治せなかったけれどもその理由がわからない。これではいつまでたっても臨床が深まることはありません。

病因病理を考えて弁証論治を起てるときに多くの場合、全身状況の変化を追うということに主眼がおかれてきます。そのため、実際に患者さんが困苦している部位と全身とがリンクしているのか否かというあたりに確信がもてなかったりするという事態が起こります。また、リンクしていると思えても、実際そうなのかどうか。果たしてそれで治療として成り立つのだろうかという不安がよぎります。

そのような時の心構えとして、

1、問題点を整理しなおす
2、臨床は失敗例の積み重ねであると腹を括る(これでだめなら次の手をといつも考えておく)
3、治療処置を後で振り返って反省できるようなものに止める
4、ひとつひとつ自分が何をやっているのか確認しながら手を進める

ということが必要となります。上手に失敗することができると、問題の所在が明確になります。弁証論治に問題があればそれを書き改めます。処置方法に問題があればそれを工夫します。治療頻度の問題であればそれを改めます。上手に失敗することができるとそこに、さまざまな工夫の花を咲かせる事ができるわけです。

下手に成功すると、安心してしまい、次もこの手でいこうなどと思い、臨床が甘くなります。反省もしにくくなり、成功例の積み重ねのみを自慢する、宗教家のような臨床家に成り下がってしまうわけです。

大切なことは、上手に失敗し続けること。その積み重ねが自分自身の本当の力量を高めていくということを知ることなのです。

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://1gen.blog101.fc2.com/tb.php/336-92517d39

この人とブロともになる