■生命力の変化を見るのが脉診
そのような脉診を少なくとも治療前と治療後にやり続けてきて徐々に理解してきたことは、実はそれよりも大きな脉の診方があるということでした。それは脉を診ることを通じて、「生命力の変化を診ている」のだということです。脉診を通じてみる生命力の変化は一瞬にして大々的に変わることもありますし、微妙な変化しかしないこともあります。それは患者さんの体調にもよりますし治療の適否による場合もあります。細かく診ているだけでは表現しようのない大きな生命力の動きのことをおそらく古人も気がついていて、これを胃の気の脉と呼んだのだろうと思います。
胃の気の大きな変化こそ、脉診において中心として把握すべきものです。これは生命力の大きなうねりなのですから。そしてそれはアナログ的な流れの変化のように起こります。ですから、何という名前の脉状が胃の気が通っている脉状であると表現することはできません。より良いかより悪いかしか実はないわけです。良い脉状にはしかし目標はあります。それは、いわゆる12歳頃の健康な少年の脉状です。楊柳のようにしなやかで、拘わり滞留することがなく、輪郭が明瞭でつややかな脉状。寸関尺の浮位においても沈位においても脉力の差がなく、ざらつきもなく華美でもないしなやかで柔らかな生命の脉状。これが胃の気のもっとも充実している脉の状態です。
胃の気が少し弱るとさまざまな表情がまた出てきます。千変万化するわけです。脉位による差も出てくるでしょうし、脉圧による差も出てくるでしょう。脉状にもさまざまな違いが出てきて統一感がなくなります。輪郭も甘くなったり堅く弦を帯びたり反対に何とも言えない粘ったような柔らかい脉状を呈するようになるかもしれません。
このことが何を意味しているのかというとを、歴代の脉書は伝えていますけれども、そこに大きな意味はありません。ましてそれぞれの脉状に対して症状や証をあてるなど意味のないことです。そんなことよりもよりよい脉状に持って行くにはどうすればよいのかという観点から治療方針を定めていくことの方が、はるかに重要です。
このようにして、陰陽五行によるカテゴリー分けにすぎなかった脉状診から、生命そのものを診る胃の気の脉診法が生まれました。そしてこの胃の気の脉を診るということへの気づきが、それまでの陰陽五行論を大きく発展させました。それが、気一元の場を、陰陽という観点 五行という観点から眺める、という一元流鍼灸術独自の陰陽五行論となったわけです。
伴 尚志
そのような脉診を少なくとも治療前と治療後にやり続けてきて徐々に理解してきたことは、実はそれよりも大きな脉の診方があるということでした。それは脉を診ることを通じて、「生命力の変化を診ている」のだということです。脉診を通じてみる生命力の変化は一瞬にして大々的に変わることもありますし、微妙な変化しかしないこともあります。それは患者さんの体調にもよりますし治療の適否による場合もあります。細かく診ているだけでは表現しようのない大きな生命力の動きのことをおそらく古人も気がついていて、これを胃の気の脉と呼んだのだろうと思います。
胃の気の大きな変化こそ、脉診において中心として把握すべきものです。これは生命力の大きなうねりなのですから。そしてそれはアナログ的な流れの変化のように起こります。ですから、何という名前の脉状が胃の気が通っている脉状であると表現することはできません。より良いかより悪いかしか実はないわけです。良い脉状にはしかし目標はあります。それは、いわゆる12歳頃の健康な少年の脉状です。楊柳のようにしなやかで、拘わり滞留することがなく、輪郭が明瞭でつややかな脉状。寸関尺の浮位においても沈位においても脉力の差がなく、ざらつきもなく華美でもないしなやかで柔らかな生命の脉状。これが胃の気のもっとも充実している脉の状態です。
胃の気が少し弱るとさまざまな表情がまた出てきます。千変万化するわけです。脉位による差も出てくるでしょうし、脉圧による差も出てくるでしょう。脉状にもさまざまな違いが出てきて統一感がなくなります。輪郭も甘くなったり堅く弦を帯びたり反対に何とも言えない粘ったような柔らかい脉状を呈するようになるかもしれません。
このことが何を意味しているのかというとを、歴代の脉書は伝えていますけれども、そこに大きな意味はありません。ましてそれぞれの脉状に対して症状や証をあてるなど意味のないことです。そんなことよりもよりよい脉状に持って行くにはどうすればよいのかという観点から治療方針を定めていくことの方が、はるかに重要です。
このようにして、陰陽五行によるカテゴリー分けにすぎなかった脉状診から、生命そのものを診る胃の気の脉診法が生まれました。そしてこの胃の気の脉を診るということへの気づきが、それまでの陰陽五行論を大きく発展させました。それが、気一元の場を、陰陽という観点 五行という観点から眺める、という一元流鍼灸術独自の陰陽五行論となったわけです。
伴 尚志
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